遅咲き読書家の日常

ありふれた日常に本という彩りを

水曜企画 推薦図書&本のレビュー

こんばんわ、ぷらとーです。

今回は「都市と野生の思考」山極寿一、鷲田清一著 インターナショナル新書

をレビューしていこうと思います!

 

 書評

本書は臨床哲学倫理学現象学、身体論、ファッションなど幅広い分野に精通している哲人、鷲田清一氏とゴリラ研究の第一人者で霊長類、人類学者である山極寿一氏との対談をまとめたものです。

 

対談テーマは「リーダーシップ、老い、家族、芸術、自由、服、食、教養、AI」と非常に多岐に渡っています。鷲田氏の「人間的な視点」と山極氏の「類人猿の視点」を対比させながら展開していく話は全て深みがあって面白い。

 

その面白さを体現した一連の対話がこちらです。

鷲田「手のひらは本来、人にとっては内側の部分で、そこを相手に見せるのは信頼とか安心を意味する。ゴリラはどうですか?
山極「ゴリラにとって手のひら、つまり内側は弱いところです。だから相手には見せない。何かを触るときでも、手のひらではなく手を閉じて指の甲で触ります。類人猿は木に楽にぶら下がるために手が完全には開かなくなっているのです。(中略)でもいつのころからか手を開くようになった。 

手のひら(内側)を相手に見せる行為 =信頼、安心を意味するという鷲田氏ならではの着想。

そして山極氏のゴリラの生態から見えてくる人間との共通点を挙げ、なおかつ「いつ頃からか手を開くようになった」という話の転換が非常にうまい。

 

自分も読んでる最中に

「なんで手が開くようになったの?」

「開いたことでどのように影響していったの?」と

問いかけたくなりました。

 

本書のもう1つの面白さは

「知識人2人の知の散歩」です。

「えっ、それとそれが繋がるの!?」という驚きが随所に見られます。

山極「アートがいつごろ、どのように生まれたのかを考えるとき、まず思い浮かぶのがロボットです。」

鷲田「アートとロボットとは、意外な取り合わせですね。」

山極「二足歩行するロボットを見ると、人間の歩行との明らかな違いに気づきますよね。人の歩く姿には主張があると思いませんか。」

鷲田「どういうことでしょう?」

(中略)

山極「人は歩くことで、何かを表現しているのです。歩く姿を見て、我々は何かを感じる。人は歩くだけでも表現する生き物なんですよ。これがアートの起源ではないかと思えるのです。」

山極氏の最初の発言に私は思わず

「えっ、アートの起源を考えれば建築とかペイントとかが思い付くのでは?」と

つっこんでしまいました。

 

自論をぶつけるのではなく、単純な質問で山極氏の思想を引き出そうとする鷲田氏。

それに応える形で小気味良く話を展開する山極氏。

 

広大なテーマから話が始まり「脱線し始めたかな?」というタイミングで

見事に結論に持っていく2人の対話はまさに「知の散歩」そのものです。

もう流石としか言いようがない

 

ちょっと難しめの用語が出てくるけど

ちゃんと該当ページに注釈があるので詰まらず読めるはずです!

週末、知識人2人の世界を味わってみませんか?

 

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それじゃあ、またね〜

 

P.S 本のPOPも作ってみました〜。これからInstagramで公開していきます。

 

https://www.instagram.com/p/BuGc-4gB84D/

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